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まとめたり,まとめきれなかったり.

ゆゆ式Advent Calendar 2016 9日目:Twitterにおけるゆゆ式実況の特徴分析

これは ゆゆ式 Advent Calendar 2016 9日目の記事です.

1 はじめに

1.1 アニメゆゆ式Twitter実況

 遡ること2013年は4月に放送が開始されたアニメ版ゆゆ式は現在も放送が続いており、当月12月をもって15期目を迎えている。おかげで名実ともに長寿番組への街道を邁進している。それぞれのクールでゆゆ式との天秤に破れていったアニメも多くあったことだろう。そんな状況を尻目に、Twitter上では毎週火曜日の0:30から1:00までの30分間に渡ってゆゆ式に心奪われた視聴者達が実況を繰り広げている。

 この事象については、ゆゆ式のBlu-rayBOX発売後に公開された、ゆゆ式の原作者である三上小又氏へのインタビューでも言及されている。

━━━本日はよろしくお願いいたします。ついにBlu-ray BOXが発売になりましたね! 今はどんなお気持ちでしょうか。

三上小又先生(以下:三上):やっとでました! アニメが放映されてから2年経ちましたが、すごく根強いファンが付いてくれてるんです。 今も第11期といって毎週Twitterでエア実況をしてくれる人がいるんですよ。~略~

「『ゆゆ式』を作り上げた大切なキーワードとは」より引用*1

 また、唯役の津田美波氏のラジオ放送でもこの件について触れられている。

Twitter上では、もう何クール目かになってるんですよ。

『津田のラジオ「っだー!!」(放送日2015年02月11日)』より引用

 本記事では、以降この一連の現象を『ゆゆ式実況』と呼ぶこととする。

1.2 ゆゆ式実況のロギング

 さて、ゆゆ式実況について簡単に知りたい方は「ゆゆ式実況推移表bot」にてその状況を把握する事ができるので参照されたい。ただし、2017年2月22日のゆゆ式OVAの発売のクールをもって運用停止する旨も報告されている。

twitter.com

2 ゆゆ式実況に対する一つの疑問

 Twitterでのアニメ実況という現象は数多く観察されど、ただ15期を迎えるアニメはそう簡単に生まれはしないだろうし、何より、当アニメはこの疑問の検証におあつらえ向きな性質――12話ごとに同様のエピソードを繰り返す――を具備している。いわば、本当は全12話を繰り返し見ていると言っても差し支えのないような印象さえ与える、非常に稀有な作品である。

 そこで生まれる疑問が、人はコンテンツを入力として何を出力としているかということである。本記事ではアニメゆゆ式を題材として、同一のコンテンツを受容した際のTwitter上の実況行動を例にとってその疑問を検証していきたい。それは、実況中の語彙の違いであったり、同一話数の実況ツイート間にはどの程度の類似性があるのか、翻っては異なる話数の実況ツイートは全く異なる内容であるのかであったり、幾つか観測してみることによって、本疑問の答えに近づけるのではないかと考えた次第である。

3 実況間の類似度指標:Jikkyo-Distanceの提案

 本記事では、ゆゆ式実況をいくつかの観点で仕分けたものを1つの時系列データとし、それぞれの時系列データ間の距離によってその違いを確認する。系列の類似度を比較するための指標には『Dynamic Time Wrapping: DTW(動的時間伸縮法)*2』を用いる。この手法は2つの系列同士の距離を計算するものであり、全く同じ系列の場合その値は0となる。また、2つの系列の長さが同一であることを限定しないため、ある程度のブレがあるツイートを題材にするには都合が良い。

 さらに、DTWでは各系列に含まれるレコード同士の距離(コスト)も定義する必要がある。この距離には『Levenshtein distance:LD(レーベンシュタイン距離)*3』を用いる。これは編集距離とも呼ばれ、ある2つの文字列の距離を表す指標であり、一方の文字列に対して操作(挿入・削除・置換)して他方の文字列を生成する場合の操作数を距離としている。そのため、同一の文字列であれば0となり値である。今回は比較対象のうち長い方の文字数で割る*4ことでLDを標準化した『Normalized Levenshtein distance:NLD』を用いる。

 以降の検証では、3章で述べたDTWの各コスト計算にNLDの値を用いた指標を、Jikkyo-Distance:JD(実況距離)と定め、本指標により各データセットの関係について検証を実施した内容を述べる。

4 検証準備

 今回利用するのはTwitterに投稿された所謂ツイートデータから、とりわけ自分が好きな話数である第9話*5の最新話である177話と、比較用の153話(13期9話)、165話(14期9話)と154話(13期10話)、166話(14期10話)を抽出したものである。表1には、今回利用する話数の放送日をまとめている。

表1.各話の放送日時
177話(15期9話) 153話(13期9話) 154話(14期10話) 165話(14期9話) 166話(14期10話)
2016/11/30 2016/06/01 2016/06/08 2016/8/30 2016/09/07

 記載されている日付の0時30分から1時00分までのツイートのうち、「ゆゆ式」もしくは「yuyushiki」を含むツイートが本検証の対象データセットとなる。また、データの前処理として、各ツイートに対して『RTの除外』、『ハッシュタグ(#)に当たる文字列の除去』、『全角スペースの半角スペースへの置換』、『改行コードの除去』を実施している。

5 結果

5.1 名詞の出現頻度Top10

 まずは、各話の実況内容の大雑把な傾向を確認するために、実況データを形態素に分割し名詞のみを抽出した。表2は、その名詞の出現頻度の上位10件を表している。

表2.第9話と第10話の実況ツイートに含まれる名詞の出現頻度上位10件
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
9 パン アニメ 人間 ふみ ゆい ゆず おっぱい
10 アニメ ゆず 津田 美波 先輩

 ゆゆ式者であれば一目瞭然といった結果となった。まず第9話であるが、全編通して耳に残るフレーズの一つである『パン人間』、前半の部活テーマである『おっぱい』、後半の部活テーマである『鬼』、そして、9話はふみが最も最初に登場し、『パン大臣』のネタ元もふみである。そういった意味では第9話はさしずめふみ回といっても良いのかもしれない。

 次に第10話である。こちらは、『服の神』のネタをきれいに拾っている。さらに、後半の『津田』『美波』に関しては、ニコ動のコメント等でも見られる『津田ネキの歌声賞賛現象』に起因するものだろう。『手』は一般的な単語(ただし、ゆゆ式を知っている人なら『手』には一家言あるだろうが)ではあるが、今回のこれは『手が泣いた』と『手から電気とか出したいね』に関係するものだろうか。

5.2 同一コンテンツに対する実況系列の類似度

5.2.1 Jikkyo-Distanceによる比較

 表3では、最新の9話である177話*6を基準として、表1で記載した他の4話とのJD値による比較の結果を示している。この指標は距離指標であるため値が小さいほど類似性が高く、逆に値が大きいほど違いが大きいと言える。全体の傾向としても、相対的に9話とのJD値が小さく、10話とのJD値は大きく出ている。全体の中から比較的ツイート数が多いユーザAと中程度のユーザBを抜き出して同様の値を算出した。しかしながら、ユーザA、ユーザBとも若干の差はあるものの、同様の大小関係を保持している。

表3.最新9話と、各9話と各10話のJD:Jikkyo-Distanceの値
対象範囲 153話(9話) 165話(9話) 154話(10話) 166話(10話)
全体 0.77 0.81 0.95 0.95
ユーザA 0.75 0.69 0.85 0.81
ユーザB 0.74 0.73 0.92 0.92

5.2.2 コストマトリックスによる比較

 図1と図2は、横軸と縦軸にそれぞれの実況ツイートの時系列順に振った通番である。すなわち、各プロットはX話実況データのk番目のツイートをx_k、Y話実況データのh番目のツイートをy_kとした場合の、NLD(x_k, y_h)の値であり、類似度が高い(NLDが小さい)ほど青色が濃くなるようなヒートマップである。図1、図2の両方に共通して、数字の小さい部分に濃い色の塊があるように見える。これは各話共通のOPに当たる部分と推測する。OPに関しては各話数に違いが極端に少ないため、実況としてもテンプレート化が進んでいるためであると推測できる。

 さらに、図1については、ヒートマップの左下から右上に向かって、青色が濃い部分が線分のように連なっているような、非常に興味深い特徴が現れている。図1は、同一話数(15期9話と14期9話)のデータを元に作成したものである。それらがほぼ同一の系列順で類似度が高い(NLDが小さい)ツイートが現れているこの特徴は、第9話において不変な実況行動が現れているといえるのではないだろうか。このヒートマップ上に現れる濃い色の連なりを「固有実況筋(コユウ-ジッキョウ-スジ)」と名付けることにする。

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図1.14期9話と15期9話のコストマトリックスの可視化

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図2.14期9話と14期10話のコストマトリックスの可視化

6 おわりに

 本投稿では、同一コンテンツ受容時のTwitter上での実況行動を、アニメ版ゆゆ式に対するユーザの反応にを通して簡単な検証を実施した。DTWのコスト計算にNLDを用いたJikkyo-Distanceによって同一話及び不同話間のツイート系列の距離を比較した。また、コストマトリックスの可視化により同一話実況における不変な実況部である、「固有実況筋」を発見した。

 実は検証に際して、同一話に対する実況ツイートの内容は、ほぼ同様で収束に向かっている(JD値がもっと小さくなる)という仮説を持っていた。しかしながら、少なくとも同じ話数と異なる話数を比較した場合に差はあるものの、収束しているとはいえずある程度の多様性を保持しているままである事が観測された。実況をしている人々は同じ話に対しても、その時の自分のコンディションや時勢によって思い思いのツイートをしているようだ。 ひょっとして、見返すことで分かる新たな発見をしていたのかもしれない。

 ここで一つ、その違いが顕著であった事例について述べたい。前処理前のある日のデータと今回の検証のベースとしている177話をJD計算プログラムに入力してみると、異様にこの日だけ優位な値(JD値が大きい)が出力された。結果だけ仮説を補強するようなもので、願ったり叶ったりではあるのだが、出来すぎな値が出た時こそ疑えということはよく言われるものである。データセットの詳細な内容まで確認すると、『誕生日おめでとう』というツイートのRTが多く散見された。この日、154話が放送された6月8日は、唯役の津田美波さんの誕生日であった。

 今回、RTの扱いを少し迷っていたが、RTは日の属性バイアスの大きな原因であると考えて、RTのみの投稿は除外している。このように、アニメの本筋に対する不同な反応行動としての実況(その最たるものが今回の固有実況筋である)はあるものの、日の特性によってもTwitter上の実況はその姿を変化させる。つまるところそれは何も日の影響だけではなく、見る人の心持ち一つであるとか、見る環境一つがその作品への印象に変化を与えることであり、各人にも覚えがあるだろう。

 繰り返しにはなるが、2017年2月22日にゆゆ式OVAが発売される事が発表された。ゆゆ式にとっての一つの転換期となることは必至である。ゆゆ式の新たな映像化を楽しむ事はもちろんのこと、Twitter上のゆゆ式実況の変化も引き続き観測していきたい。

 最後に、一見すると同一話数の繰り返しに見えていたそのアニメ版ゆゆ式も、本当の意味ではそれぞれが異なる178話を見ていたのかも知れない。

 もう、同一話数とは言わせない。

Appendix I

 明日の担当はわたげ(@Lucky_yyg)さんです。まるっちくて柔らかそうな絵柄が非常に可愛らしくて、中でも自分は今年の7月くらいに投稿されていた、RPGのジョブの格好をしたキャラがすごく好きです。自分は絵が描けないので色々こねくり回していますが、ゆゆ式AdventCalendarの楽しみの一つは間違いなくかわいいゆゆ式絵が増えることだと思っています。

Appendix II

 ゆゆ式OVAが予約受け付け中です。至急、予約する必要がありますので予約してください。

 ゆゆ式BD-BOXも発売中です。至急、買う必要がありますので買ってください。

*1:animate Times、ゆゆ式を作り上げた大切なキーワードとは、http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1448864128、2016年12月8日閲覧

*2:Wikipedia、Dynamic time wraping、https://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_time_warping

*3:Wikipedia、レーベンシュタイン距離、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E8%B7%9D%E9%9B%A2

*4:Colorless Green Ideas、文字列の類似度を測る(3) レーベンシュタイン距離の拡張 、http://id.fnshr.info/2011/11/29/damerau/

*5:参考:ゆゆ式トイレ分布 -Twitterの視点から-、http://ekranoplan94.hatenablog.com/entry/2015/12/09/000033

*6:『最新のX話であるY話』って表現スキスキ